稲のことは稲にきけ

稲のことは稲にきけ

 

今回は、家の光協会の「稲のことは稲にきけ―近代農学の始祖 横井時敬」をご紹介します。

 


ページ数:396p

寸法:18.6 x 12.8 x 2.8 cm

出版社:家の光協会

刊行日:1996-05

概要

 

こちらの本は、近代農学の農業教育の発展に尽力した、農学者であり農業経済学者でもある横井時敬氏の活動やその思想をまとめた一冊です。

東京農業大学の初代学長であり、本著のタイトルにもなった「稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け」という同氏の言葉は有名です。

 

横井氏は、「塩水選種法」を考案し、その後も米の育成データを取り効果を確認するなど、農業に理論的・科学的に取り組み、その進歩に寄与しています。

「塩水選種法」とは、塩水によって稲の種子の比重の差から良質な種子を選別する方法です。また、その延長線上で、他の穀物類でも比重による選別方法「比重選別法」を確立しています。

 

前半は、そういった研究の過程や、その成果を普及する際の困難とその克服の過程が記述されています。

また、同氏の著書である「栽培汎論」について、9ページを割いて紹介・解説をしています。

 

後半は、教育者として農学・農業教育の発展や、日本の農業の保護に取り組む姿が記述されています。

同氏は、農業の発展と農村の進行を目的とする大日本農会(現在は公益社団法人)に若くから所属していますが、そこで農業技術の普及のために奮闘する様も描かれています。

 

しっかりとした分量(396ページ)で、横井氏の農業発展のための取り組みを記述しています。さらに、同氏の発言や紙面での文言を抜粋するとともに、その思想への考察を記述しています。

同氏の活躍や考えを知りたい方は、本書を読めばその足跡をたどることができることでしょう。

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目次

 

第一章 日本の農学こと始め

 一 近代農業教育の揺籃

              駒場農学校/札幌農学校

 二 明治農学の流れと形成

              明治初期政府の勧農政策/農談会と明治農法/福岡県農学校と横井時敬/在来農法と明治農学

 三 東京帝国大学農科大学農学第一講座

              講座制/農学第一講座/横井時敬の教育研究/横井時敬の実学としての農業経営学/東京大学の変化と横井時敬の実学思想

 

第二章 実学思想と科学開眼

 一 熊本横井家の系譜

 二 横井小楠と実学党の影響

 三 熊本洋学校に学ぶ=L・L・ジョーンズとの出会い=

 四 駒場農学校の麒麟児

 五 学生生活と学位授与

 

第三章 アグロノミスト横井時敬

 一 画期的な稲作技術「塩水撰種法」

              「塩水選種法」の創案/福岡農学校存廃問題と「塩水選種法」/「塩水選種法」のその後/当初不評だった「塩水選種法」/横井前後の塩水選の例/効果の実証/内国勧業博覧会で受賞『重要作物塩水選種法』……塩水選種法の総括/府県郡などによる奨励/比重選の意味を巡って/塩害の検証/国による督励/塩水選種法記念碑の建設/選種から品種改良へ

 二 我が国初の遺伝育種論『作物改良論』

              『作物改良論』より/「人為淘汰」すなわち「選種」/「人工交種法」について/「育種場」の設立を提唱

 三 『栽培汎論』に見る総合技術

 四 在来農法と欧米農学のかけ橋

              マックス・フェスカのアドバイスと老農の経験/アジアの稲作と日本の稲作

 

第四章 農業党の先鋒者

 一 農政論者としてのスタート-『興農論策』起案者としての横井

 二 横井「農業経済学」の形成

 三 農業党の先鋒者-農政論者としての横井時敬

 

第五章 農業教育への情熱

 一 東京農業大学育ての親

              育英黌農業科の誕生/横井時敬の登場/東京農学校から東京農業大学へ/横井時敬の農学教育思想/農大精神の高揚

 二 農家五訓と農民像

 三 『小説模範町村』に託す理想の農村

              都市的田園思想/技術改革と複合経営

 

第六章 社会的啓蒙への情熱

              横井時敬と大日本農会

 一 大日本農会の誕生と福岡支会

              明治初期の勧農政策と農談会/大日本農会の誕生/福岡支会・農談会等における横井時敬の活動

 二 大日本農会の活動路線

              二つの提言-『興農論策』と大日本農会の冀望/農会組織化への動き/前田正名の大日本農会幹事長就任/全国農事大会の開催へ向けて/活動路線の論争その後

 三 大日本農会に期待するもの

              横井時敬の主要な四つの活動/大日本農会に託す夢

 

第七章 八面六臂の男

 一 快刀乱麻を断つ

 二 火を吐く筆鋒

              農商務省分断論/農民連盟の結成

 三 書家虚遊

 四 軍隊農事講習

 五 人間横井時敬

              肥後もっこす/勉強家/盆踊り博士とアブラ虫騒動/家庭の人・時敬寸描

 

第八章 横井時敬と新渡戸稲造-二人の農学者と現代

 一 二人の農学者

 二 合理的精神-肥後実学党とキリスト教

 三 横井と新渡戸の「農業と農学」

              農本主義/農学と農業/学理と実際

 四 おわりに-日本を相対化する

 

横井時敬略年表

あとがき

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