今回は、農文協の「有機栽培の基礎と実際-肥効のメカニズムと設肥設計」をご紹介します。
ページ数:271p
寸法:20.8 x 14.8 x 1.6 cm
出版社:農山漁村文化協会
刊行日:2005-04-01
概要
こちらの本は、有機栽培で良質な野菜ができるメカニズムや有機質肥料の肥効など、イメージや経験則のみで語られることの多かった有機栽培を、イラスト図や化学式などを用いて理論面から解説しています。
要所要所で他の研究者の論文や文献を引用しており、その点からも有機栽培をなるべく客観的、科学的に説明しようという著者の意欲が感じられます。
序章では、イメージやなんとなくで有機栽培をされている方が陥りがちな落とし穴を紹介するとともに、本書の参照部分を掲載し、誘導しています。
1章、2章では、作物の生長や肥料吸収の仕組、有機栽培による生長促進のメカニズムなどについて、イラスト図を使用して詳しく解説しています。
3~5章では、有機栽培の要ともいえる、土づくりや肥料、土壌分析について解説しています。
土づくりでは、有機栽培をする上で目指す土質の説明や有機物・微生物の活用した土質改善などが紹介されています。
堆肥については、アミノ酸肥料やミネラル肥料の肥効、使い方を解説するとともに、良い肥料・悪い肥料の見分け方も紹介しています。
土壌分析については、市販の簡易測定キットを使った土壌分析方法の説明と、結果をもとに行う処置が紹介されています。
6章では作物別の施肥設計のポイントや注意点、各地の事例を紹介しています。7章は、堆肥やボカシ肥の作り方のポイントや注意点が説明されています。
本書は有機栽培をできるだけ理論・科学的に説明しようとしており、これから有機栽培を始めようとしている方はもちろん、現在なんとなくで有機栽培をされている方にもお勧めの一冊です。
なお、本文中に出てくる著者作成の施肥設計ソフトですが、以前は本書購入により無料配布していましたが、現在(2018年3月時点)では「実践!有機栽培の施肥設計」を購入して入手する必要がありますので、注意が必要です。
※参照HP:Japan Bio Farm 施肥設計ソフトの入手法:http://www.japanbiofarm.com/manure_design/request.html
関連書籍:有機栽培の肥料と堆肥-つくり方・使い方
スポンサーリンク |
スポンサーリンク |
目次
序章 なぜ、有機栽培で失敗するのか-思いちがいから探る
- その1 堆肥を入れていればまちがいない?
- その2 ボカシをやっていればいいものがとれる?
- その3 ボカシなら水田でも畑でも、同じように使える?
- その4 有機なら作物が必要なときに必要な養分を吸収する?
- その5 有機だから、収量は低くても仕方がない?
第1章 有機栽培って何だろう?
- 作物の生長と炭水化物
- (1)育つ基本は炭水化物
- (2)作物の体をつくる炭水化物
- (3)エネルギー源としての炭水化物
- 有機栽培のメリット
- (1)炭水化物をたくさんつくり、効率よく使う作物の戦略
- (2)有機態のチッソも吸われている!
- (3)アミノ酸は炭水化物をもったチッソ肥料
- 有機栽培で実現できること
- (1)アミノ酸直接吸収のメリット
- (2)おいしいものをより多く生産できる
- (3)天候に左右されない栽培が可能になる
- [資料]有機のチッソも吸収されている―試験研究の成果より
第2章 作物の生長と有機栽培
- 作物の生長のしくみ
- (1)作物の生長の流れ
- (2)作物の生長と〈製造部〉・〈運搬部〉・〈合成部〉
- 〈製造部〉のしくみと有機栽培
- (1)葉緑素の構造
- (2)光合成が行なっていること
- (3)葉緑素が働く条件と有機栽培
- 転流のしくみと有機栽培
- (1)〈運搬部〉の役割と養水分の流れの調整
- (2)〈運搬部〉の機能と有機栽培
- 合成・貯蔵のしくみと有機栽培
- (1)栄養生長と有機栽培
- (2)花芽分化と有機栽培
- 〈果菜類の場合〉
- 〈果樹の場合〉
- (3)成熟・蓄積のしくみとおいしさ
- (4)根の働きと有機栽培
第3章 有機栽培の土つくり
- 土つくりのねらい
- (1)活力の高い根と養分吸収
- (2)土つくりの考え方
- 土をよくする要素とよくなる順番
- (1)根の呼吸環境を整える-物理性の改善
- (2)土壌病虫害を出さない-生物性の改善
- (3)肥料をつかみ、必要なときに手放す土のふところをつくる-化学性の改善
- 堆肥の役割と力
- (1)堆肥の働き
- (2)堆肥の持ち味を生かす使い方
第4章 有機栽培と肥料-アミノ酸肥料とミネラル肥料
- 有機栽培のねらいと肥料
- (1)有機栽培に使う肥料
- (2)有機栽培の肥料の両輪
- アミノ酸肥料の特徴と使い方
- (1)発酵肥料としての特徴
- (2)アミノ酸肥料の使い方
- (3)アミノ酸肥料の肥効
- ミネラルの働きとバランス
- (1)ミネラル肥料とその特徴
- (2)ミネラル肥料の拮抗作用と相乗作用
- (3)ミネラル肥料の施用の考え方
- (4)ミネラル肥料の種類と特徴
- 注目したい堆肥の「肥料」的効果
- (1)堆肥の中のアミノ酸
- (2)センイ類の効果-根から吸い上げられる炭水化物
- よい有機質肥料、悪い有機質肥料の見分け方
- (1)仕上がったもので見分ける
- (2)原料、つくり方で見分ける
- 有機栽培の補助資材-葉面散布剤など
- (1)葉面散布のねらい
- (2)葉面散布の実際
第5章土壌分析の考え方とその実際
- 有機栽培の土壌分析
- (1)土壌の化学分析の前に圃場チェック
- (2)有機栽培と土壌分析法
- 体積法による土壌分析法
- (1)採取時期
- (2)採取方法
- (3)分析項目
- 土壌を診断する-分析データの読み方と処方箋
- (1)CECで施肥の幅を知る
- (2)リン酸が多いときどうするか
- (3)肥料成分バランスが悪いときどうするか
- (4)高pHのときどうするか
- (5)低pHのときどうするか
第6章 有機栽培の作目別施肥設計とその実際
- イネ
- (1)施肥設計の前提
- (2)イネに必要な肥料とは
- (3)施肥の実際
- (4)よくある失敗
- ◆事例❶イネ
- 果菜類
- (1)施肥設計の前提
- (2)果菜類に必要な肥料とは
- (3)ハウスでの有機栽培
- (4)作目別の施肥設計
- ◆事例❷ナス
- 根菜類
- (1)施肥設計の前提と肥料
- (2)作物別の施肥設計
- ◆事例❸ニンジン
- 葉菜類
- (1)施肥設計の前提
- (2)堆肥施用と施肥のコツ
- 落葉果樹
- (1)施肥設計の前提と肥料
- (2)いちばん大事なのは礼肥
- (3)元肥の施し方
- (4)追肥の決め方と実際
- (5)失敗しないための注意点
- ◆事例❹モモ
- 常緑果樹
- (1)施肥設計の前提と肥料
- (2)温州ミカンの施肥の実際
- ◆事例❺カンキツ
- チャ
- (1)施肥設計の前提と肥料
- (2)旨み・甘みをさらに引き出すには
- (3)チャ園の施肥のコツ
- 花き
- (1)施肥設計の前提と肥料
- (2)施肥の実際
- 飼料作物
- (1)施肥設計の前提と肥料
- 過剰障害に対する処方箋
- (1)養分の過剰はどこでもおこり得る
- (2)カリ過剰
- (3)石灰の過剰
- (4)リン酸過剰
- (5)硝酸態チッソの過剰
- 有機栽培と病虫害対策
- (1)病虫害を招いてしまう要因
- (2)有機栽培での病虫害対策
第7章 堆肥・アミノ酸肥料(ボカシ肥料)のつくり方
- 堆肥の効用、アミノ酸肥料の効用
- (1)C/N比からみた堆肥とアミノ酸肥料
- (2)堆肥・アミノ酸肥料のもっている付加価値
- 堆肥素材の選び方
- (1)堆肥による土の改善
- (2)素材の選び方
- 堆肥づくりのポイント
- (1)堆肥づくりと微生物の遷移
- (2)「戻し堆肥」で失敗しない堆肥づくり
- (3)堆肥づくり四つのポイント
- 良質堆肥づくりの実際
- (1)エアーレーションの実際
- (2)堆肥施設の装備
- (3)品質のチェック
- アミノ酸肥料
- (1)アミノ酸肥料づくりの考え方
- (2)タネ菌の採取法と培養法
- (3)アミノ酸肥料づくりの実際
- 失敗の原因と解決法
- (1)チッソ不足による失敗と改善法
- (2)水分過多による失敗と改善法
↓↓↓こちらをポチっとしていただけると励みになります
にほんブログ村
こちらもおまけで
人気ブログランキング
スポンサーリンク |
スポンサーリンク |