今回は、講談社の「GDP4%の日本農業は自動車産業を超える」を紹介します。
ページ数:256p
寸法:17.2 x 11.4 x 1.8 cm
出版社:講談社
刊行日:2015-12-18
概要
こちらの本は、長く日本の農業で大規模化が進まなかった原因、変わり始めた現状、新しい日本の農業を創る仕組みや技術を紹介しています。
前半は、JAや政府の減反政策に厳しくメスを入れています。
後半は、日本各地で始まった大規模化の流れや、補助金になるべく頼らない儲かる農業へのさまざまな取り組み、新しい農業の経営形態、農業の第六次産業化などについて述べられています。
目次
6章で構成されています。
第1章 農業を殺した「戦犯」たち
第2章 世界五位を誇ったコメの実力
第3章 大進化するコメ農業の可能性
第4章 輸出産業となった日本農業
第5章 ロボットと農業参入者のシナジー
第6章 農業の「多面的機能」で世界に
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内容紹介
第1章、第2章では、日本と海外の一農業経営体(一定規模以上の農家※1)の数及びその耕地面積の差と、日本で大規模化が進んでこなかった理由・仕組みについて解説しています。
特にJAや政府の減反政策が、農業の大規模化に与えた影響について詳しく述べられています。
※1 農林水産省HP(http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/07.html)の中ほどに、
農業経営体の定義と現在の数が記載。
第3章では、コメ相場が低迷する中、新しい試みで攻めに出ている農家を特集しています。
大きく作り方を変えることでコストダウン・効率化を目指す農家、コメの需要増加のための新しい食品の開発、定番品種から変更、コメの品質評価基準の細分化と明示化等、どれも一筋縄ではいかない取り組みに果敢に挑戦されています。
第4章では、フランチャイズ型やアライアンス型農業、食品大手企業や流通・小売大手企業の農業参入について解説しています。
第5章では、ボランティアでなく、農業の担い手・ビジネスパートナーとして高齢者・障害者と向き合う企業が紹介されています。
また、最先端のロボット農機についても紹介・解説があります。
第6章では、生産活動としての農業だけではなく、景観や文化などの面を観光資源として活用している例が紹介されています。
六次産業化につながる興味深い取り組みが各地で行われています。
最後に
先行きが不透明な日本の農業に、明るい未来を描く本書。
特に海外に比べて極めて少ない農業経営体当たりの耕作面積(経営面積)については日本の農業の持つ大きな問題点として全体を通して触れられています。
ただ、本書ではあまり触れられていませんが、大規模経営=高GDPというわけでもないようです。
例として、同じ島国のイギリスを挙げると、国土は日本の6割程度、農用地面積は日本の約4倍、平均経営面積93.6ha(2013年時点)で日本のおよそ37倍ですが、GDPにおける農業部門の割合は0.7%程度(2014年)※2で、同年の日本の農業部門の割合は0.8~0.9%※3です。
また、日本とほぼ同じ産業形態をとるドイツは、日本の約4倍の平均経営面積あります。
ですが、農林水産省の資料※4によると、こちらは農林水産業一括りのためさらに小さくなりますが、対GDP比で0.7%と日本よりも低い状況です。
※2:農林水産省、主要国の農業情報調査分析報告書より
※3:農林水産省、GDP(国内総生産)に関する統計より
※4:農林水産省、第90次農林水産省統計表・主要国の農業関連主要指標より
農業の地位復興には本書の6章で特に触れられている、農業の六次産業化が不可欠なのだろうと思います。
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