菜の花エコ辞典~ナタネの育て方・生かし方~

菜の花エコ辞典

今回は、創森社の「菜の花エコ事典~ナタネの育て方・生かし方~」を紹介します。

 


ページ数:196p

寸法:1.4 x 14.8 x 21 cm

出版社:創森社

刊行日:2011-01-21

概要

本書は、昔に比べて生産量が大きく減っている菜の花・ナタネの種類や栽培方法などに焦点を当てています。

冒頭ではまず、菜の花復活のための活動「菜の花プロジェクト」を紹介。

つづいて、過去の栽培や品種改良の歴史から、現在栽培されている品種やその特徴、さらに栽培方法や搾油技術など菜の花・ナタネの情報がぎゅっと詰まった本となっています。

目次

 

本書は5章で構成されており、目次は下記のとおりです。

 

第1章 菜の花で地域と地球がよみがえる

  • 一面を黄色に染める菜の花の魅力と価値
  • 菜の花プロジェクトを全国各地へ広げる

第2章 菜の花の素顔・種類と有用なはたらき

  • 菜の花とナタネ
  • 形態や種子成分からみたナタネの特徴
  • ナタネの原産地・来歴と栽培の歴史
  • ナタネ・ナタネ油の特徴と用途いろいろ
  • ナタネの栽培面積と産地、自給率の推移

第3章 ナタネの栽培から収穫・乾燥・搾油まで

  • ナタネの栽培歴と作付体系
  • 圃場の排水対策と耕耘
  • 品種の選び方と種子の求め方
  • 条播・散播の方法と播種量、覆土
  • 基肥施用と追肥窒素
  • 雑草防除と食害対策
  • 機械収穫と収穫適期
  • 夾雑物の除去と乾燥・調製
  • 搾油技術と圧搾法
  • 植物油の規格と地油
  • 委託搾油の場合の心得

第4章 資源循環サイクルと菜の花の生かし方

<菜の花栽培の多面的機能>

  • 地域モデルでの栽培から収穫まで
  • 生ごみの堆肥を有効に活用した菜の花栽培
  • 菜の花を観光資源に町づくり
  • 菜の花で環境学習(1) 愛知県・田原東部小学校
  • 菜の花で環境学習(2) 静岡県・磐田農業高等学校
  • 都市型菜の花栽培(1) 銀座の屋上が菜の花畑に
  • 都市型菜の花栽培(2) 住宅街で菜の花栽培
  • 都市型菜の花栽培(3) ベランダのプランター利用

<食材としての菜の花・ナタネ油>

  • ナタネの搾油と精製(1) 昔ながらの圧搾法
  • ナタネの搾油と精製(2) 特許の湯洗い洗浄法
  • 全国のナタネ搾油所マップ
  • 食用油として流通(1) 生協との連携
  • 食用油として流通(2) レストランとの提携
  • ナタネ地油ブランド一覧
  • 菜の花を生かした加工食品
  • 「菜の花オイル」を使ったアイデアレシピ

<廃食油の活用>

  • 廃食油の回収(1) 行政との連携型
  • 廃食油の回収(2) 持ち込み型
  • 廃食油の回収(3) 全国展開型
  • 廃食油の回収(4) 企業型
  • せっけんにリサイクル
  • BDF(バイオディーゼル燃料、バイオディーゼル)にリサイクル
  • BDFの利用(1) 農業機械
  • BDFの利用(2) 車両・発電機
  • BDFの利用(3) 企業の取り組み

<菜の花で土づくり>

  • 副産物の油かすを堆肥化して還元

第5章 菜の花がもたらす資源循環社会への道

  • 菜の花による食・農と教育、景観への活用
  • バイオマスの宝庫田んぼから地域の再生を
  • プロジェクトの全国展開で資源循環社会へ
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内容紹介

 

第1章 菜の花で地域と地球がよみがえる

1970年代、琵琶湖の水質悪化から始まった環境保全運動が、資源循環サイクルを目指す「菜の花プロジェクト」に発展していく過程と現在の活動内容を紹介しています。

また、その資源循環サイクルを目指す中で、菜の花の役割とその復活活動の全国への広がりも解説しています。

 

第2章 菜の花の素顔・種類と有効なはたらき

この章では下記の内容について説明・解説があります。

○ 学名や染色体の構成に基づく、菜の花の植物学的な区分を解説。「禹の三角形」と言われる染色体構成図の簡単な解説があります。

○ 在来ナタネと西洋ナタネの外観上の特徴や、種子に含まれるエルシン酸・グルコシノレートの量やその影響について解説しています。

○ ナタネの起源、世界での広がりと日本への伝播の歴史を紹介。

○ ナタネ・ナタネ油の成分などの特徴や用途が紹介・解説されています。また、その他の主要植物油との脂肪酸組成(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸など)比較が記述されていいます。

○ 2008年時点での世界及び日本のナタネ栽培面積及び生産量、日本での栽培状況の変遷の歴史、国内需要について紹介・解説しています。

 

第3章 ナタネの栽培から収穫・乾燥・搾油まで

この章では、下記について記述されています。

○ ナタネの一年の栽培スケジュール(栽培歴)。

○ 圃場の排水対策や耕耘ポイントの解説、品種の選び方とその特徴、種子の入手方法の紹介をしています。紹介されている品種は「アサカノナタネ」、「キザキノナタネ」、「菜々みどり」、「キラリボシ」、「ななしぶき」、「タヤサオスパン(T-830)」です。

○ 播種方法、基肥・追肥、雑草対策、食害対策、収穫方法の紹介・解説と作業のポイントが記述されています。

○ 搾油技術・圧搾方法の紹介・解説。

○ 「なたね油」、「精製なたね油」、「なたねサラダ油」の違いが記述してあり、また、植物油の日本農林規格が表で載っています。

○ 外部に搾油を委託する場合の注意点。

第4章 資源循環サイクルと菜の花の生かし方

この章では、全国の菜の花にかかわる栽培活動、環境活動が載っています。

また、全国のナタネ搾油所の一覧とマップも載っており、一覧には住所・電話番号・HPのURLが記載されています。

第5章 菜の花がもたらす資源循環社会への道

資源循環社会実現のための今後の課題などが語られています。

最後に

 

本書でに書かれている通り、昔は米の裏作で菜の花を作っていることが多かったようですが、現在では菜の花の換金植物としての価値の低下からほとんど作られることはないようです。

この本を読み終わった後、ふと思い起こすと、たしかに管理人の家の周りにある水田では、稲を刈った後はほぼ100%裏作をしていません。

ただ、本書、特に第4章を読むと、まだ日本にもナタネに関する技術は生きているのだと感じさせられます。

 

本書に載っている産出国を見ると、広大な土地を持つ中国、カナダ、インドはすぐになるほどと思うのですが、ドイツやフランスも上位5か国に食い込んでいます。

 

ヨーロッパでのナタネの主な使い方はバイオディーゼル(BDF)です。

環境意識の高いEUでは、植物由来のBDFはカーボンニュートラル※1ということで、利用を促進しています。

特にドイツでは2007年よりバイオ燃料割当法※2によりBDFの混合を義務化し、さらにBDFに免税措置をとることで休耕田のナタネ栽培が飛躍的に増えたようです。

※1:二酸化炭素を吸って育った植物由来の燃料によりCO2が発生しても差し引きゼロという考え方
※2:燃料に一定割合のバイオ燃料を混合することを義務付ける法律

 

なお、2013年には単純なBDFの免税措置は撤廃されましたが、廃食油由来のBDFは優遇される制度となっています。

 

日本でも、このように意識の変化と制度的なバックアップで菜の花も含め、環境に優しい作物の復活や、休耕田の活用が活発化するといいですね。

 

 

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